「お兄さま!」

皇子を見るなり、姫は嬉しそうに抱きついた。

姫のこんなに穏やかなカオを見るのは本当に久しぶり。


今夜は智と一緒に皇子もやってきた。

良かった。
姫の笑顔を見ると、こっちまでホッとする。


「すまんな、ここのところ公務が忙しくてな」

「お兄さま……」

皇子の表情は冴えない。
疲労の色が濃い。

姫は皇子の顔をじっと見つめて彼の頬をなでてる。
愛しそうに、いたわるように。

皇子はそれに応えるように
姫のほっぺたを両手で優しく包むようにしてそのままキスをした。


私と智はそっと部屋をあとにした。