部屋に入るとすぐに智は私の手を引いて座り、そのまま智の前に座った。

私を後ろから抱きしめてくれる。


姫の話、自分自身の体のこと。
そんなことがあったせいか、今日は一段と智の胸にいると切なくて胸を締めつけられる。

智の腕を強く抱きしめた。

「智……」

「ん~?」

甘くのんびりとした返事をすると、
私の顔をのぞきこみついばむようなキスをくれて、
そのまま私の右肩に顔を置く。


「アレがね、来た」

「アレ?……あぁ、アレか。そっか」

「やっぱりすぐにはデキなかったりするもんなんだね」

「ま、そうだよな~」

智はたいして気にしてない様子。


「ねぇ、……智も皇子たちのこときいた?」

智の腕が一瞬ビクンとなった。

「きいたけど?」

「皇子と姫は兄妹」

「だから?それがなんだよ。
 皇子は皇太子だし、国の重要人物だろ?
 でも、オレたちは違う。カンケーないだろ?」

智の声は明らかにこわばっていて、
言葉とはうらはらにおそらくは私とおんなじことを感じてることがわかる。


「うん、だけど、同じ両親から生まれた兄妹は罪なんでしょ?
 生理もきたし、多分そういうことなんじゃないかな」

「なんだよ、そういうことって!」

「家族を築いちゃいけな」

“い”という最後の言葉は智の唇にふさがれて言えなかった。

息をするなと言わんばかりの激しいキス。


「はぁ、はぁ、はぁ、……」

唇が離れた時には私は酸欠気味。大きく肩で息をする。

智も少し息が荒くなってる。

「美姫。
 この世界でふたりで夫婦として生きていくってオレたち決めたじゃん。
 オレは絶対にあきらめないからな」

智も多分不安なんだと思う。
でも、力強く言ってくれる。

私はあふれてくる涙をゴシゴシと乱暴に拭きながら、コクコクと何度もうなずいた。