「どした?」
智の腕の中。
髪を撫でてくれる心地いい手。
私たちは生まれたままの状態で横になっていた。
「うん、お母さんのこと考えてた」
「そっか。……母さん、どうしてるかな」
「この世界で生きていきたい気持ちはあるけど、
お母さんのことだけは気がかりかな。
私たちふたり一気にいなくなったから……」
「そだな。でも、藤原(フジワラ)さんが支えてくれてるよ」
「そだね」
藤原さん。
私たちが幼い頃からお付き合いしてる人。
何度か私たちも会ったことがあって、
藤原さんは早くお母さんと結婚したいって言ってくれてたけど、
お母さんは私たちが社会人になってからじゃないと結婚しないって言ってた。
私たちがいなくなって、
藤原さんが心細くなってるお母さんのことをきっと支えてくれてるはず。
だから、今は私たちがいなくなってつらいかもしれないけど、
藤原さんがお母さんのことを守ってくれるはずだから安心。
お母さん、今まで育ててくれてありがとう。
そして、親不孝でごめんなさい。
でも、私と智は幸せになります。この世界で。
ねぇ、お母さん。
もう会えないかもしれないけど、
私と智は幸せに暮らしていくから、どうか心配しないでください。
今まで私たちのことばかり優先してくれてたけど、
お母さんも藤原さんと夫婦になって幸せになって。
「母さんには申し訳なけど、オレは美姫と生きていきたい。……夫婦として」
智が私を抱き寄せて自分の胸に掻き抱く。
私は何度もうなずいた。
ねぇ神さま。
私たちはただお互いを想っているだけ。
たまたま兄妹だっただけ。
どうして同じ母親から生まれてきた人間だけが想い合うことを許してもらえないのですか。
どうかそのワケを教えてください。
こんなにもお互いを必要としてるのに。
この恋が罪だというのなら、
世界はずっとずっと罪に満ちている。
世界はゆがんでる。
運命の出逢い 終