「元気だったか?」 「元気だよ。あたしはいつだって元気」 「そっか……」 ポツポツと会話をしては無言になる空気も雨音が上手くカバーしてくれる。 「少し話せる?」 「仕事帰りだから……大丈夫だけど……―」 本当はすぐにでもシャワーを浴びたかった。 あの頃を思い出す宗と話すなら尚更、浅葱の手の感触を消してしまいたい。 「無理ならいいんだ」 ハッキリとしないあたしに宗は気を使ってくれる。 「ウチでもいい?すぐそこなの」 そう言いながら後ろを向き、指を指した。