キラキラと輝くシャンデリア、綺麗なドレスを身に纏う令嬢たち

中央には、誰もが立ち止まって見るほどの美形のハインリッヒ国国王レナード様、社交界の花と言われている王妃、クーナ様。
シャンデリアの輝きに照らされ、二人は一層美しく見えます。

その後ろには、二人の一人息子でもあり、
ハインリッヒ国王太子 レオナール様がいらっしゃいました。
二人の血を受け継ぐレオナール様は、いちばん輝いて見えます。
文武両道、金髪碧眼の背の高い、まさに理想の王子様のような人です。


そんなレオナール様の婚約者であり、幼なじみでもあります。
私はエドワード公爵家令嬢 サイーナ。
貴族では珍しい銀髪の髪を持っていますのよ。

今日は国王夫妻の結婚20周年記念パーティーですが、
レオナール様と私の結婚を正式に発表する場でもありますわ。

私はこの日を楽しみに待っていたの。
心から愛するあの人と結婚できるのですから。

兄にエスコートされ、国王夫妻に挨拶を済ませた私は、1人でワインを飲んでいましたの。友人がいないわけではないのですよ!
ただ、心の準備をする時間が必要でしたの。

そんなことを考えていたら、真っ直ぐこちらへレオナール様様が向かっていらっしゃるわ!
早くレオナール様の近くに行きたいですわ。

あらっ。レオナール様が右に曲がってしまわれたわ。
どうしたのかしら?珍しい。
いつもは私のところに一番に来て下さるのに…

レオナール様が向かっていったのは、ある一人の少女の元だった。桃色のふんわりした髪をゆらしながら、可愛らしい笑顔をレオナール様に向けていた。
そう、あれは、ルイン男爵家令嬢エリスだわ。

レオナール様も私に向ける笑顔とは違う。心のそこから笑っていた。

周りは少しざわめいたが、少しすれば元にもどった。
私とレオナール様の婚約はまだ正式に発表されているから。
さすがに公爵家令嬢の婚約者に近づくものはいないわ、ふふ。


それにしても、いつまでいちゃいちゃしてるのかしら、 あの2人は
レオナール様の腕に豊かな胸をわざと当てて!はしたないわ。
別に、自分の胸が貧相だからって、エリスに八つ当たりしているわけじゃないわ、おほほほ。
レオナール様も嬉しそうにしちゃって!

出会った最初の時から分かってたもの。
私はレオナール様に愛されてないって。

あれは、私が、12歳で、レオナール様ガ、14歳だったときのことよ
お父様と王家の住むお城を訪ねたとき、私はレオナール様に心を奪われたわ。いわゆる、一目惚れってやつね。

「こんにちは。はじめまして。私の名は、レオナール。よろしくね。サイーナ」
と、おっしゃられたときの笑顔は、忘れられないわ

それからというもの、すぐに婚約が決まり、私の家にレオナール様が来てくれるようになったわ。
いつも変わらない美しい笑顔で私の名前を呼んでくれて、楽しいお話をしてくださって、私にとったら、飽きることのない楽しい時間だったわ。

けど、そんな楽しい時間にももう少しで終止符が打たれるでしょう。レオナール様のお顔を見ていれば、分かるわ。

ほら、こっちに来た…
エリス男爵令嬢に向けた笑顔とは、正反対の深刻な表情で、横にエリス男爵令嬢を連れながら…

「サイーナ、話がある。」
『はい、なんでしょうか。レオナール様』
「君は、エリス男爵令嬢を虐めたそうだね。階段から突き落としたり、物を壊したりと。本当なのかい?」

はい!?何のことやら。いったいなにがどうなっているのか。こっちが聞きたいくらいですわよ。
男爵令嬢とは、初対面ですし。

『こほん。殿下、私はエリス男爵令嬢とは、初対面ですし、そうした記憶がございません。』

「殿下!この人は、嘘をついています。証拠にこれを!」

そういい、差し出してきたのは、ボロボロになった髪飾りだった。
「これは、私の母の形見なのです。それを『レオナール様に近づかないで!』と言いながら、壊したのです。ぅぅぅ…」
と、泣きながら、レオナール様の後ろに隠れる男爵令嬢エリス。
その男爵令嬢を抱きしめるレオナール様。

いや、そんな髪飾り知らんわ。壊した覚えもないわ。イライラしすぎて、おおっと、お口が悪くなってしまったわ、おほほ。
それにしても、レオナール様に失望しましたわ。前までは、もっと立派でいらしたのに。
こんなレオナール様と結婚するくらいなら、婚約破棄されてもいいわ。

「こンなことをする君とは、一緒になれない。今、この場で婚約を破棄する!」

来ましたわ!!婚約破棄出来ました!
お前なんかと一緒になるか、ばーか!おおっと、また口が…

『分かりました。婚約破棄を受け入れます。さようなら。』

「えっ。ちょっと待っ…」

さぁ、これで自由だわ。サイーナ、自由にむけてはばたくのよ