moon~満ちる日舞う少女~【上】





順「香月?どうかしたんすか?」


確かこいつが久山順太郎か。さっきの自己紹介、香月のことでいっぱいで頭に入ってこなかったけど…




香「な、なんでもない…。俺もねぇ…じゃなくて美月送ってそのまま帰るから」



香月、今姉ちゃんって言おうとしてただろ!



修「わかった」



私と香月は手を振られながら倉庫をでた。




美「あれ?バイクなんだぁ」




香「うん。後ろ乗って」





私は手慣れた動きで香月の後ろに座り、腰に手を添える。




美「…」




なかなか動かないので私は首をかしげた。









香「…姉ちゃん…」



あぁ…そうか…。




私はギュッと香月を後ろから抱きしめた。




美「お姉ちゃんは側にいるから」




辛かっただろう。寂しがり屋の香月が私と離れるだけじゃない。家族がばらばらになったから。苦しかったんだね…。


ごめんね。気づかなくて…




香月は少し肩をビクッと揺らして、少しずつバイクの速度をあげていった。まるで、その涙を乾かすかのように…。