「新村くん」

私が顔を上げて新村くんをじっと見つめる

「うん?」

「……私」

話さないと……

手が震える……口も震えて、声も震える

もっと、勇気を出さないと……頑張れ、私

「私、も、話さないといけない」

「うん」

気づいてるのかな……これから私が何を話そうとしているのか


「あの時…私……」

「無理、しなくていいよ?しずく」

首を横に振った

「違うの…無理、してない……」

すると、なら、聞くよと優しく微笑んでくれた

少しだけ…少しだけ、心が落ち着いてきた気がする

「私…あの時……あ、あのっ、お、男の人に」

頑張れ。頑張って、私

「お、おかさ……っ!」

言うことをためらった訳じゃあない

弱い私が勝ったのでもなく…

新村くんが、私の手を握ったから

私の手を握って、いいから、それ以上言わなくていいから。と言った

不思議と、新村くんにあの時起こした拒絶反応はなかった

「新村くん……?」

「……も、わかったから……っ…それ以上、苦しまないでっ」

「新村くん、わたし……」

「っ!ごめっ!近づいちゃったっ……!」

焦ってパッと私から離れる新村くん

何だか、その反応に少しだけショックを受けてる自分もいて

少し戸惑う……

けれど、離れてみて新村くんは、あれ?と首をかしげた

「しずく……大丈夫…なのか?」

不安そうな顔に、何だか…心がおかしくて

笑って、大丈夫みたいだね、と言ったら、安心したような顔をしていた