病院は思ったよりも遠かった。

いや、遠く感じた。

足も速い方で、持久力もある方だと思っていたが、到着までに4回も足を止めた。

30分と少し走って、やっと着いた。

受付で住崎がいる階を教えてもらい、早足で向かう。


「勇、、、。」


荒い呼吸を整えながら、集中治療室の前にある椅子に座っている勇に声をかけた。

夏木「冬哉、遅かったじゃねぇか。」

「悪い。走ってきたから。」

夏木「はぁ⁉︎
お前、タクシーくらい使えよな‼︎」

勇の説教(?)を受け流し、

「住崎は?」

夏木「、、、、、、、、」

勇は急に黙り込んんだ。

「ああ、住崎ならすぐ元気になるってよ!」なんて言葉を期待していた、いや、それしか考えないようにしていた俺は、頭の中が真っ白になっていきそうな思いになった。

「勇、、、、、?」

夏木「住崎な、、、かなりの重症らしい。」

「なッ、、、、、」

すると、俺の反応を見た勇は、慌てて付け加えるように話を続けた。

夏木「あー、言い方が悪かった。
医者の話によれば、命に別状はないら
しい。」

「じゃぁ、、なんだよ、、、。」

夏木「精神的な問題で重症だって言ったんだ
。」

「精神的?」

夏木「ああ。
虐待、結構酷かったみたいだぜ。
手当てした医者にそう言われた。
だから今、集中治療室にいるんだ。」

「、、、、、、。」

夏木「頭も強く打ったらしい。
気を失ってたのは、たぶんそのせいだ
ろうな。
俺たちの聞いたあの音だと思う。



で、医者とかが1番心配してんのが、


















記憶喪失だってよ。」

「記憶、、、喪失、、、、、。」


夏木「頭の強打とか今までの事が原因で、記
憶が欠ける可能性があるらしい。
最悪、今の記憶が全部なくなることもあ
るらしい。」

「、、、、、、、、、。」

夏木「俺がこういうのもなんだけど、お前、
覚悟はしとけよ。」

「、、、、、、ああ。」

(記憶が、なくなる、、、。
たった数回だけど、住崎と過ごした昼休みの思い出も、なくなるってことだよな?)

そう思うと怖くなった。

(嘘だろ?

俺は、まだ謝れてねぇぞ!
あんなに傷つけたんだ。
謝らないといけねぇのに!


本当は好きだってことも伝えてねぇ。

住崎に伝えてねぇ事が山ほどあるんだ‼︎






頼むよ、神様!
住崎の記憶を奪わないでくれッ‼︎)

神様の仕業かどうかもわからないものをいるかもわからない神様に頼んだ。