夏木「なんだ?この部屋?」

一瞬、俺の口から出た言葉かと思った。

なぜなら、目の前にはどう見ても、“大人の”女性(25〜30歳くらい?)の部屋で、住崎の部屋でもなく、当たり前だが、住崎の父親の部屋でもないからだ。


扉を開けたすぐ目の前には、シンプルで綺麗な色の花柄のシーツがかかったダブルのベットが、部屋の真ん中から壁に寄せたように置かれていた。

そして、タンスや小さなソファー、テーブル、小物類がベットを囲むように並べられていた。


(住崎の、母親の部屋、か?
だけどさっき、住崎の父親はこの部屋から出
て来た。
一体、この部屋で何やってたんだ?)

そんな事を考えながら部屋の中をグルリと見回していると、窓に近いベットの陰から2つの裸足が見えた。

「住崎ッ‼︎」

住崎だと思った俺は急いで駆け寄った。

そこで傷だらけの住崎を見つけた。

(やっぱりいた‼︎)

「住崎ッ!おい、住崎‼︎」

あちこちにアザを作り、口端や頭部に血をにじませ、グッタリとした住崎の体を抱きかかえ、何度も呼びかける。

だが、反応が無い。

「勇ッ‼︎救急車頼む‼︎」

夏木「おう!」

勇は電話をかけながら、救急車を待つため、家の外へと出て行った。

「、、、、、どういうことだ?」

怒りを込めた声で、住崎の父親に問いかける。

すでに素が出ていて、俺の口からは敬語なんかとっくに消えていた。

父親「、、、、、、、。」

(無言か?)

「何も言わねぇつもりか?」

父親「、、、、、し、知らん。
私は何も知らん。」

(まさか、「知らない」で通す気か?)

「知らないはずねぇだろ!
あんたの娘だろうが!
知らないの一言で済むと思ってんのか⁉︎」

父親「、、、、、、、、、。」


明らかに様子のおかしい住崎の父親に対して、質問を繰り返すが、本人は無言か「知らない」の返事しかしなかった。