「お。雨が降ってきたな。」



タリズマンの情報収集の仕事を終え、久々の休日。

酒場のソファに腰掛けていた俺は、窓の外を見ながらそう呟いた。



…そういえば、今日は昼過ぎから雨予報だったな。

朝から天気は曇っていたし。



その時、俺の言葉を聞いたレイがカウンターから、ぱっ、と飛び出した。


そして、椅子にかけてあったコートをばさり、と羽織る。


俺はそんなレイに声をかけた。



「そういえば、嬢ちゃん、傘を持たないまま買い出しに行ったんじゃないか?」



「あぁ。迎えに行ってくる。」



レイは、テキパキと身支度をし、酒場の扉のプレートをcloseにした。



…相変わらず嬢ちゃんのことになると行動速いんだからこいつは…。


雨が降ってきたと俺が言った途端、すぐ買い出しから戻ってきてない嬢ちゃんのことが頭に浮かぶなんて、流石としか言いようがない。


俺はソファから立ち上がりながら口を開く。



「洗濯物干してないだろうな?」



「…あ、ヤベ。庭に干しっぱなしだ。」



二人分の傘を置こうとしないレイに、俺はため息を吐きながら言った。



「…しまっておくから、さっさと行け。」



レイは、俺のその言葉を最初から望んでいたように「おぅ、ありがとな。」と答え、酒場を出て行った。



…ったく、いつまで経っても世話が焼ける。



俺は急いで庭へと向かい、数枚の洗濯物を抱えて酒場の奥の生活スペースへと運んだ。


テキパキとたたみ、濡れて湿ったものはハンガーにかけてシワを伸ばす。



…母親か、俺は…。



つい、そんな事を考えていると、酒場の方から扉の開く音がした。



…レイか?

いや、あいつはさっき出て行ったばかりだ。帰ってくるはずがない。


まさか、客…?

まずいな。表のプレートを見なかったのか?



俺は駆け足で酒場へと向かい、そこにいた人物に目を見開いた。



「…レイ?お前、早くねぇか?」



「…っ!」



そこには、先ほどまで一緒にいたレイの姿があった。


何やらこそこそしていたレイは、俺の声を聞いた瞬間、びくり、と体を震わせた。



…何しに来たんだ?こいつ。