「兄さんって、第一印象悪く見られるよね。

まぁ、今でも印象良くないけど。」



それは、酒場に来たルオンが放った一言が始まりだった。


ソファに座っていた私とロディが、カウンターに立つレイを見ると

レイは不機嫌そうだが図星を突かれたように険しい顔をしていた。


カウンターの席に座るルオンが、レイに向かって言葉を続ける。



「無愛想だし、口数少ないし、口を開けば冷たいし。

接客業のバーテンとして向いてないんじゃないの?」



「…まぁ、お前の言うことも一理ある。昔から、第一印象良く見られたことないし。

お客さんにはちゃんと笑いかけてるけどな」



レイの返答に、私はふと考える。



…そういえば、確かに私も

最初レイと会った時に“怖い人”だなって思ってたな。


全然笑わないし、目つきも鋭いし。


…今では、照れて不器用なだけだって分かったから怖くないけど。


私は、レイに向かって声をかける。



「ギルと最初に会った時は、優しい人だなって思ったよ。

ギルみたいに接客すれば、第一印象も良くなるんじゃないかな?」



レイは、ギルだったわけだから

紳士的になろうと思えばなれるんだろうし。


すると、それを聞いたロディが、レイに向かって口を開いた。



「じゃあ、レイ。今日一日は、ギルを演じて接客をしてみろよ。

言わば、“悪魔禁止令”ってトコだな。」






“悪魔禁止令”…?


すると、レイが眉を寄せて呟いた。



「ギルは、ルミナに正体がバレないように演じてただけだから、ルミナの前でしかやったことないし。

…この姿でやるのは抵抗が……」



すると、ルオンが頬杖をつきながらレイに言った。



「恥ずかしがってる場合じゃないよ、兄さん

第一印象が良くなれば、酒場にもっとお客が入ると思うけど?」



…!


レイは、それを聞いてしぶしぶ納得したように呼吸をしたのであった。