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「こちら、メニューになります。

お決まりになりましたら、お呼びください」



数分後。


“奇妙な相席”が実現した。



…会って数分の、素性も分からない男性と食事をしている。

初めての体験だ。


焦って、いつもは絶対しないような提案をしてしまった。



内心、緊張と動揺で震えていると

目の前に座る青年が私に向かって声をかけてきた。



「あんた、注文は決まったか?

俺も酒を頼みたいんだが。」



「!あ、はい。お先にどうぞ。」



…お酒を頼むのか。


やっぱり、引き止めて誘ってよかったかもしれない。


この人の食事を、危うく私のせいで中断させてしまうところだった。



青年は慣れた仕草で店員を呼び、注文を告げる。



…よし。

何はともあれ、やっと肉にありつける…!



私が思わず、にやけそうになった、その時。

青年が私に向かって口を開いた。



「あんたは、“金曜限定特別メニュー”でいいんだよな?」



「…へっ?!……あ、はい。そうです。」



つい、変な声が出てしまった。


青年は私の心を読んだかのように、ズバリと私が頼むメニューを言い当てた。



…この人、一体何者…?



私は店員が去った後

警戒しながら青年に尋ねた。



「どうして、私の頼むものが分かったんですか?」



すると、青年は半分残っていた自分の料理を口に運びながら答える。



「あんた、いつもこの時間に来て、同じもの頼んでるだろ?

だから、今日も特別メニューを頼むんだろうなって思っただけさ。」