桜の季節、またふたりで

話は尽きないまま、私のマンションに着いてしまった。


竣くんは私の自転車をおろすと、そのまま駐輪場まで運んでくれた。


「私が運ぶよ」


って言ったけど、


「美春の部屋までついていく口実を考え中だから」


また、私の髪をなでた。


私は、髪をなでてくれてる竣くんの左手に、両手を重ねた。


そして、そっと手をおろすと、竣くんと手をつないだ。


ずっとずっと、ふれたかった手。


いとおしくて、大切な手。


「美春、手をつないでくれんのは嬉しいんだけど、自転車ちゃんと持つから一瞬待ってな」


竣くんは、あいている右手で自転車を支え直そうとしていた。


「あっごめんね、手をつなぐのやめるよ」


離そうとした私の右手は、がっちりホールドされて動かない。


「いいって、右手だけで押せるから」


そんな竣くんのたくましさに、ドキドキしてしまった。