桜の季節、またふたりで

その時、竣くんは、私の髪を優しくなでた。


ふたりでいた時と、同じように。


「送るよ」


つきあっていた時と同じ車に向かって歩いていく竣くんが、キーホルダーに手をかけてロックを解除した。


私がプレゼントした、キーホルダーだった。


「竣くん、それ・・・」


「乗って」


「は、はい」


竣くんは、前と同じように安全運転だった。


この辺に土地勘のない私は、どこを走っているのかわからない。


そういえば、私の自宅がどこかまだ言ってない。


「竣くんごめんね、私、住所まだ言って・・・」


「着いたよ」


「え?」


マンションの駐車場から竣くんについていくと、エレベーターは5階で止まった。


竣くんは、507号室のドアの鍵を開けた。


『IGARASHI』っていう表札がかかっていた。