【紫・長編】華押(hana oshi)

「またな」が最後の言葉だった。

強風が帆を促し荒れ狂う海原に帆船は転覆しそう。
船乗りは犯しがたきミスを行ってしまった。

海の嵐だ。

海の嵐だ。

海の嵐だ。

快適船旅だけ経験の乗組員達は圧し殺した悲鳴を僅かに吐く。
「大丈夫だ。きっと」
口々に旅路安全の呪文を唱え、傾く船体にしがみつく者、傾きに流される者、色々。

シャラム・クーンも怖かった。
自分の「サラマンドラ…」の発動みたいと泣いてた。

船長が大声でシャラム・クーンを呼ぶ。

「すまない。これでは君は俺の娘並みだ」
助けてやりたい。
だが、このシケは船長にも初めての体験。自然の脅威にベテランでも「楽観的逃避思考」に甘んじられず。

そして最後の言葉を紡ぐ。
どこか、どこか彼の世で…