「や、矢代くん」
さりげなく掴まれた手が、逃がさないと言っているみたいだ。
そのまま手を引かれ、近くの公園に入ると
ベンチに座らされた。
「もうそれ、やめて」
「え?」
「“矢代くん”って、うざい」
座る私の正面に立ち、私を見下ろしながら悠里くんは言う。
……うざいって。
名前を呼ばれるのすら、嫌だったんだ。
悠里くんを直視出来なくて顔をうつむかせると、
目をそらすことを許さないかのように、悠里くんはしゃがんだ。
「……!」
「なぁ、
もう“悠里くん”って呼んでくんないの?」
「……へ?」
悲しそうな瞳で言う。
え…
悠里くん、って……
「呼んでも、いいの…?」



