* * *
お昼休みも終わって、午後の授業が始まる。
自分の席に着くと、
見えるのは、やっぱり悠里くんの背中だけ。
目線が合うことなんて、ほとんどない。
プリントがまわされる時も、いつも視線がこっちに向くことはない。
……さっきのは、奇跡みたいなものだ。
もしくは、夢?
「じゃあここの問題を……吉川」
「へっ?」
「わかるか?」
「あっ…えっと」
やばい。
当てられると思わなかったし、全然聞いてなかった…。
どうしよう、全然わからない。
教科書も今どこ開いてるのかわかんないし…!
素直に『わかりません』と言おうとした。その時。
前の席からビリビリと音がして、
悠里くんが、答えの書いた紙を持ち、
バレないように机の下でヒラヒラと動かした。