キキィッ、ドン!


運転手は乱暴な運転で縁石に乗り上げ何かをぶつけ、振り切るように更にスピードを上げた。

後部座席に膝立ちして後ろの窓から顔を出すと、歩道に倒れ込む時流様の姿が遠ざかって行く。


「っ、時流様!」


酷い!


「何するんですか!彼は唐沢財閥の御曹司ですよ!?」

「それがどうした、そりゃ世間から見た価値だろ。俺にとっちゃ金持ちだろーが貧乏だろーか、ガキはガキだよ」


運転手は冷めた口調で淡々と運転を続ける。

ミラー越しに見える目は、面倒な仕事をやっと終わらせられたような、達成感と疲労が混ざった目をしてた。


「黙ってねーと舌噛むぜ、嬢ちゃん。どーせ戻れねーんだから、シートベルトくらいしとけ」