「市木?どうした?パンが潰れてるが……」

「ふぇっ、あ、あー!!」


いつの間にか手に力が入ってて、丸いパンが楕円形になっていた。

れ、麗歌ちゃん、ごめんなさい……













正門前まで歩くと、外国車が止まっていた。

蝶野さんの車だ。

か、顔、もう赤くないよね……?

なんとなく気恥ずかしくて、ぺちぺちと頬を叩いて冷ます。


「お待ちしておりました。時流様、小紺様」


恭しく頭を下げて、蝶野さんが運転席に座ったまま、自動で後部座席のドアをガチャリと開けてくれた。


「市木、先に乗れ」


あれ、通常ならご主人様が先に乗るものじゃないのかな?

疑問に思ったけど、使用人として時流様の言う事は絶対聞かなくちゃならない。