「お、おい!いきなりなんだ、主人を突き飛ばすとは―――」

「失礼致しました。ですが、そうでもしないとお命を守れなかったので」


市木が振り返り、床を指さす。

見ると、弾丸が真っ二つになっていた。


「数メートル先のビルの屋上で、時流様のお命を狙う狙撃手がおりまして。突然のご無礼をお許しください」


日本刀を納刀し一礼する市木は、侍のように凛々しい顔つきだった。

俺の命を本気で守ろうとしてる顔。

俺、狙われてたのか。

全然気がつかなかった……市木を雇ってなかったら、俺は今頃死んでる。

いくら運動神経がよくても、反射神経や殺気を察する力が無いと駄目だな。

腰が抜けて立てないのを隠すように、俺は床に座った状態で聞いた。


「お、お前……今朝もそうだが、どこから刃物出してるんだ?」

「真吹さんがスカートの裏にこの様な細工を施してくださってので、ここに」


市木が足首まで届きそうなくらい長いスカートを捲り、スカートの裏側を見せた。

はしたない真似をするなと言いたいところだが、シザーケースのように収まった刃物を見ると、なぜだか納得してしまい言えなかった。