「市木、行くぞ」

「……」

「市木?」


市木がその場から動かない。

なんとも言えない顔でどこか一点をじっと見てる。

霊感でもあるのか?


「時流様!これ、もしよろしければ……!」


そうしてる間にも、貢ぎ物の嵐は止まらない。

今度は女子から高そうな薔薇の花束だ。

後ろの蝶野と真吹は、プレゼントの持ちすぎで前が見えにくく危ない状態になってる。

仕方ない、一旦俺が持つか……



シュパアァ-ン!!



でも、それは俺の手元に来ることは無かった。

受け取る前に、見事に目の前で真っ二つにされたからだ。

包丁でりんごを切ったように、アラがない綺麗な断面。

一陣の風と薔薇の花びらと芳しい香りが周囲に広がる。

……何が起こったんだ?