学力が同年代より上の俺は、本来もう学校に行く必要が無い。

だが、同年代の一般庶民と親しくするのも勉学の内だと言う父親の考えで、時々気が向いた時にだけ地元の私立高校に通っている。

蝶野が聞いてるのは、今日は行くか行かないかという事だ。


「え?あー……今日は月曜か。行くよ。ついでに学校の奴らに新しい使用人を紹介してくる」

「かしこまりました。お車の用意をしておきますね」

「ではでは、私も登校時間に間に合うように朝食をご用意してきます!」


蝶野は駐車場の方に、真吹が調理場にさっさと移動していく。

ここまではいつもとそんなに変わらない。

問題は二度寝してしまって起きる気配のないこの殺人鬼娘だ。


「市木、市木。起きろ」

「むー……」


まだ毛布の中で猫みたいに丸くなってる。

意外と寝起き悪いな、こいつ。

人形みたいな顔してるから、そのまま目を開けないんじゃないかと思えてくる。

俺は市木のほっぺをフニフニと抓る。

起きない。

参ったな。