引くのかと思ったら押すのが正解だったドアに苦戦しつつ、私は廊下に出た。
電気が一つもついてないけど、先生のおかげで夜目に慣れる方法を知ってる私には、長い廊下がよく見えた。
たくさん部屋があるけど、どれが時流様の部屋なんだろう……
一つ一つ開けるのも失礼だし。
外側を見ただけじゃ分かんないかな……と思いながら、目だけで探す。
えーと……あ。
『JILL』と書かれた小さい看板がドアについてる部屋があった。
この部屋だけ広いみたいだし……多分そうだよね。
ドアノブを回すと、鍵はかかってない。
失礼を承知の上で、私は部屋に足を踏み入れた。
今日から使用人になったのに、本当に失礼な事しかしてないな、私。
そして更に夜中に起こすという失礼をしようとしてる。
そんな自分に呆れつつ、時流様を探……そうとしたけどすぐに見つかった。
部屋の三分の一を占めるくらい大きいベッドに眠っていた。
起こすのがもったいないくらいの寝顔だ。
どうしよう……
私の気配でスッと起きてくれないかな。
まぁ忍者でもない限りそんなの無理なんだけど。

