目を合わせないように、見てはいけないものを見てしまわないように、必死に目をつぶった。

服の脱ぎ方を口頭だけでこいつに教えられた俺を誰か褒めてくれ。


「……あー、そこにウォッシュタオルがかかってるから、それにボディーソープをつけて体を撫でるように洗ってくれ。あとシャンプーとリンスとコンディショナーは真吹のがあるから、そこに置いてあるの使え」

「うぉっしゅたおる?しゃんぷー?こんでぃしょなー?」


背を向けてても、分からないという顔で市木が首を傾げるのが伝わってくる。

シャワーの出し方はなんとなく分かっても、ものの名前が分からないのか……

くそおぉっ!!

真吹に外出許可を出してしまった事を、全力で後悔する。

ここまで無知だとは……

わざとかとさえ思えてしまう。

壁を殴りたい衝動に駆られそうになるが、こいつは何も悪くないし、雇って面倒見ると宣言したのは俺だ。

そんな事はしない。けど。

このまま放置しても大変な事になりそうだ……

……いたしかたない。


「市木、風呂用の椅子に腰かけてろ。絶対俺の方は向くなよ」


俺はシャツの袖とチノパンの裾を捲り、浴室に足を踏み入れた。