俺は高級なレストランの料理より、学校で食べる給食や学食の方が好きだ。

深い理由は特に無いが、誰がなんと言おうとそういうのが好きなんだから、しかたない事だろ。


「さ、市木様もどうぞどうぞ!私の隣座りましょ!」

「あ、ありがとうございます……」


真吹は女子が増えて嬉しいのか、テンションが上がりっぱなしだな。

仲良く出来れば、雇い主としても嬉しいが。


「じゃ、食うか」

「はい!」

「いただきまーす」


普通、こういう使用人を雇う家は、使用人と家主で食事を別にするが、この唐沢邸には今日来たばかりの市木を加えても四人しかいない。

こんなに広いのに一人で食べるのもなんか寂しいし、使用人は皆家族同然に思ってるから、いつも食事は俺と同じテーブルでとっている。

さて、俺も食うか……あれ?


「?市木?」


市木の様子がおかしい。

皿の両脇に置かれたナイフとフォークを不思議そうに眺めた後、素手でローストビーフを触ろうとしてる。