今日から私は唐沢家の使用人として、彼のお家で働くらしい。

別に嫌じゃないし、正直どうでも良いと思ってる。

ご飯を食べて寝る場所が変わるだけだもの。

仲の良い人なんていなかったし、この児童養護施設に未練も無い。


自分の服と靴だけを鞄に詰めて、私は車に向かった。


「どうぞ、こちらに」


銀縁眼鏡の執事さんが後部座席のドアを開け、乗せてくれた。

助手席にメイドさんが座ったから、私は時流様の隣に座る。


「シートベルト、ちゃんと締めろよ」


少しぶっきらぼうな声が私に向けられる。

……この人が、今日から私のご主人様。

それにしても、よく整ったお顔立ち。

サラサラの髪は長くないのに綺麗にセットされてるし、チャコールグレーの瞳は宝石みたい。

でも、決して華奢な体つきではなく、男の人らしいたくましさも兼ね備えてる。

『ジル』ってちょっと変わった名前だし、ハーフなのかな。

私とは全く違う立場の人……