だが、よく考えれば児童養護施設にいるという事は、過去に家族関係で色々あったんだろうと予想は出来る。
しかしこの感受性の無さは異常だ。
「本当に良いんですか、あんな女で……いくら私達でも、あそこまで頭空っぽだと、面倒見きれませんよ?」
蝶野が不安げに耳打ちしてきた。
……上等だ。
面白い奴じゃないか。
「何度も言わせるな。雇うのは俺。俺が世話するから良いんだよ」
俺はこいつを気に入った。
だから使用人にする。
ただそれだけの簡単な話だ。
「市木といったな。お前自身はどうなんだ?俺の元へ来るのが嫌なのか?」
彼女のミッドナイトブルーの瞳に、真面目な顔つきの俺が映る。
「……いいえ」
「使用人として、うちに来てくれるか?」
「はい……」
ふわふわした返事だが、一応ちゃんと意思表示はしてる。