制服についた埃を払い、気配がないのを確認して鍵を外す。
周囲を警戒しながら進むのは変に目立ちそうだったけど、何とか悪目立ちすることなく教室に戻って来れた。
舛田は戻ってこなかったらしい。
とりあえず自分の席に戻ると、何事もなかったように教科書を出す。
「葉月さん?」
「ッ!?」
「大丈夫?それ」
声をかけられただけでも飛びあがりそうになってしまったことを恥じつつ、いつの間にか目の前にいた麻夏くんに視線を向ける。
指差されているのは左手首で、知らないうちに血が伝ってしまっていた。
「保健室行く?」
「…コク」
「一緒に行こう。ついてくから」
「…!」
もうすぐ授業が始まる。麻夏くんまで巻き込みたくない。
首を横に振っても、麻夏くんの意思は変わらず、私の肩を持つ。
「いいから。すぐ戻ってくれば大丈夫」


