私のご主人様Ⅲ


どこに逃げる?どこに行けば捕まらずに済む?

左腕についたままの手錠がカチャカチャ音を立てる。まだなんとかゆるいそれから無理矢理手を引き抜いて、放る。

顔を上げた先に丁度あった女子トイレに駆け込み、個室に入り鍵をかける。

「ッはぁッはぁ…」

逃げ切れた…?

人の気配がしないことを確認して、深く息をつく。足の力が抜けてズルズルと座り込み、息を必死に整える。

…って、どうしよう。私かなり怒らせたんじゃ…。

もし、これが無効になったら、今まで犯した危険は全部意味をなくしてしまう。

それは、得策じゃない…。

謝って済むんだろうか。でも、あれは向こうだって悪い。情報が間違っていようが、それは間違いなく本物で、実際に下された命令なんだから。

息が大分落ち着いてきたところで、左手首が痛むことに気づいて視線を向けると、擦りむいたのか、血が滲んでしまっていた。

…最悪。しかも、確実に目立つところだ…。

ため息をついて立ち上がる。とにかく、授業には出なきゃ…。