どこに逃げる?どこに行けば捕まらずに済む?
左腕についたままの手錠がカチャカチャ音を立てる。まだなんとかゆるいそれから無理矢理手を引き抜いて、放る。
顔を上げた先に丁度あった女子トイレに駆け込み、個室に入り鍵をかける。
「ッはぁッはぁ…」
逃げ切れた…?
人の気配がしないことを確認して、深く息をつく。足の力が抜けてズルズルと座り込み、息を必死に整える。
…って、どうしよう。私かなり怒らせたんじゃ…。
もし、これが無効になったら、今まで犯した危険は全部意味をなくしてしまう。
それは、得策じゃない…。
謝って済むんだろうか。でも、あれは向こうだって悪い。情報が間違っていようが、それは間違いなく本物で、実際に下された命令なんだから。
息が大分落ち着いてきたところで、左手首が痛むことに気づいて視線を向けると、擦りむいたのか、血が滲んでしまっていた。
…最悪。しかも、確実に目立つところだ…。
ため息をついて立ち上がる。とにかく、授業には出なきゃ…。


