次の瞬間、塞がれた口。抵抗しても力負けしてドアから引き離され、準備室の中央に放られる。
「ッゲホッゲホ…」
巻き上げられた埃に、何度もむせる。その間に近づいてきた舛田の目に、いつか見た色を思い出す。
『…琴葉。かわいい、俺の琴葉』
…嫌だ。…嫌だ!!!
伸びてきた手を払いのけ、震える足を叱咤して立ち上がる。
そのまま逃げ出そうとドアに伸ばした手は、背後から伸びてきた手に阻まれて指先を掠めるだけ。
「離せっ!!いやぁあああッ!!!」
「ッ声出してんじゃねぇ!」
床に押し倒され、舛田が手にしている手錠に目を見開く。嘘でしょ…なんでそんなものがあるの…?
片腕に手錠がはまる。
ッ!?まずい!!
咄嗟に足を屈め、舛田の腹に向かって思いっきり伸ばす。
「ッグ…てめッ」
溝に入ったのか、苦痛に顔を歪める舛田の隙をついて立ち上がり、振り返ることなく準備室を飛び出す。


