私のご主人様Ⅲ


次の瞬間、塞がれた口。抵抗しても力負けしてドアから引き離され、準備室の中央に放られる。

「ッゲホッゲホ…」

巻き上げられた埃に、何度もむせる。その間に近づいてきた舛田の目に、いつか見た色を思い出す。

『…琴葉。かわいい、俺の琴葉』

…嫌だ。…嫌だ!!!

伸びてきた手を払いのけ、震える足を叱咤して立ち上がる。

そのまま逃げ出そうとドアに伸ばした手は、背後から伸びてきた手に阻まれて指先を掠めるだけ。

「離せっ!!いやぁあああッ!!!」

「ッ声出してんじゃねぇ!」

床に押し倒され、舛田が手にしている手錠に目を見開く。嘘でしょ…なんでそんなものがあるの…?

片腕に手錠がはまる。

ッ!?まずい!!

咄嗟に足を屈め、舛田の腹に向かって思いっきり伸ばす。

「ッグ…てめッ」

溝に入ったのか、苦痛に顔を歪める舛田の隙をついて立ち上がり、振り返ることなく準備室を飛び出す。