ただの薄情なのか、それとも罪悪感に襲われないように自分を抑えているのか。
自分のことなのに、私はそんなことも分からなかった。
「…琴音?」
「…」
「…悪い。怖がらせた」
無器用に、私を怖がらせまいと微笑んだ暁くんは、すぐ視線を逸らし様子をうかがうように廊下を見つめる。
…暁くん、ごめんなさい。
これが起こることを私は知っていた。いつどころで襲撃が起こるのか。どんな作戦で、どのような襲撃の仕方なのかさえ。
すべて知っていても答えない私は、永塚組を傷つけていく。
守ってくれた人たちの信頼も、優しさも踏みにじって私は舛田に情報を渡す。
それが、お父さんのところへ帰る、1番の近道だから。
目を閉じる。
騒ぎが落ち着くまで部屋からは1歩も出ず、慌てて用意した食事もあまり喉を通らない。
自分が決めた道。これが、私が交わした契約。
分かっていても、心のモヤモヤが晴れることはこの先ずっとないだろう。
例え、成功したとしても…。


