「琴音、聞いてんのか」

「…」

「…お前、学校で…」

暁くんが何かを言いかけた瞬間、閉じられていた襖が開け放たれ、息を乱した森末さんが飛び込んでくる。

同時に、遠くから喧騒が聞こえてくる。

「またやられたっ!暁は琴音ちゃんと待機!」

「ッ!?嘘だろ!?」

「…」

今にも飛び出して行きそうな勢いで立ち上がった暁くんは、それでも踏みとどまった。

森末さんはどこかに走っていって、玄関先に人が集まっていくように、声が大きくなっていく。

「…っくそまた闇討ちかよ」

「…」

壁に拳を叩きつける暁くんは、悔しさを滲ませ、見えない敵へ殺意を向ける。

その様子をぼんやりと見つめる自分は、この状況を誰よりも理解しているはずなのに、まるで無関係の出来事のように感じている。