私のご主人様Ⅲ


暁からの鋭い視線を受けつつ琴音ちゃんの頭を撫でる。

しばらくして落ち着いたのか、顔を上げた琴音ちゃんは暁に舌を出す。暁が更に怒ったのは言うまでもない。

「とりあえず帰るよ。琴音ちゃんまん中乗りな」

「コク」

「お前、帰ったら覚えとけよ」

物騒な暁をなだめつつ、全員が車に乗り込んでようやく発進する。

琴音ちゃんは俺の手を握ったまま、じっと見上げてくる。その頬をつついても視線は外れない。

「…」

「…ふぁ」

「何遊んでるんすか」

頬を引っ張って伸ばすと流石に嫌なのか、首を振って振り払われた。

ごめんごめんと言いながら頭を撫でると、頬を膨らませて怒ってますと言うような顔をする。

「琴音ちゃん甘えん坊になった?」

「?」

「奏多さんが甘やかすからでしょ」

「プゥ」

「違うじゃねぇ」

琴音ちゃんが頬を膨らませただけで、反論してることを当ててみせた暁に少し嫉妬した。

読唇術が使える暁と琴音ちゃんがなにか話してて分からないことは多かったけど、表情だけでもやりとりを始められたら俺ますますおいてけぼりにされそう…。