「立って話すのもなんだし、座りなよ」
「…」
私から離れた舛田は、少しほこりを被った机に腰かける。
でも、近くには行かない。ドアを背にしたまま舛田を見つめると、信用ねぇ、傷つくとかぶつぶついい始める。
でも、まぁいいやと言う声と共に視線が向けられた。
「単刀直入に言うわ。取引しねぇか?」
「…」
唐突に言われた言葉に一瞬耳を疑った。取引?一体何を求められてる?
今の私に出来ることなんかほとんどない。それこそ、差し出せるものなんか、なにも…。
想像がつかなくて、返事をしないまま舛田を見つめ返す。
「もしかして疑ってる?」
「…」
「…まぁ、だよなぁ。うーん。実はね、永塚組を潰そうと思ってるんだよねぇ」
まるで冗談を言うように、さらりと言われた内容は、とても聞き流させるものじゃない。
目を見開いて舛田を見ても、飄々とした顔は変わらなかった。


