麻夏くんが言葉を発する度、手に汗がにじんでいく。
否定のしようがない言葉を告げられる度にどうすればいいのか分からなくなる。
「…葉月さん、永塚に脅されてるの?」
「…」
「…葉月さん、教室出よう。俺の予想があってるなら、葉月さんは…」
麻夏くんが私の肩を掴む。でも、その手は直後に伸びた手に引き離される。
同時に右腕を捕まれ、立たされる。
視線を向けなくても分かる。話を聞いてたんだって、強く捕まれた腕が逃がさないと言っているようだった。
季龍さんを見つめる麻夏くんの顔は、以前季龍さんに向かったときよりもずっと険しくて、睨み付けていた。
「葉月さんに何したんだよ」
「てめぇが首を突っ込んでくんじゃねぇ」
「ずっとおかしいって思ってた。葉月さんが無条件に永塚に従うこと。前だって、永塚に逆らうことなんかしてなかった。今だってそうだろ」
麻夏くんの視線が私を捉える。そして差し出された手。
「葉月さん、永塚から離れて。こっち来て」
「…」
無理だよ。腕を掴む手は、力が緩むどころかさらに強く私を捕らえる。
この手を振り払ったら私はどうなるか分からない。
首を横に振る。簡単に下ろされた手。でも、麻夏くんが季龍さんを睨む。


