「それじゃ、出発します」 運転席に座った平沢さんの声が聞こえた直後、車はゆっくりと走り出した。 遠くなっていく季龍さんたちの姿は、あっという間に高さのある窓から見えなくなって、時々通りすぎる街灯が車内を照らす。 「…っうう。っふぇ…」 静かな車内に聞こえてきたのは梨々香ちゃんの泣き声だ。手を伸ばすことさえ出来ないもどかしさを感じることしか出来ない。 誰も梨々香ちゃんを慰めることもないまま車は進む。 窓の外から見える景色は僅かに見える星空だけ。