「…琴音、悪かった」

季龍さんの謝罪は余りにも悲しくて、胸がジクジクする。

首を横に振っても、季龍さんは苦笑いするだけで、伝えたいことはなにも伝わらない。

これじゃ、結局話す前と同じだ…。

ゆっくりと布団に寝かされたかと思うと、季龍さんは私に覆い被さるように私の体を跨ぐ。

近づいてきた顔に、何をするかなんて愚問はなくて、ただ目を閉じてキスを受け入れた。

壊れ物に触るように、静かに唇を重ね、手を握られる。それが、もどかしくて、寂しくて、胸がズキズキと痛み出す。

あぁ、私は…。季龍さんのことが…。

気づきかけたその思いに、蓋が閉まりきっていなかったことに気付く。

ダメ。季龍さんは、ご主人様なんだから…。

何度も言い聞かせるのに、季龍さんと唇を重ねる度に、その思いは意図も簡単に溢れ出ようとする。

それを必死にこらえ続けた。

気づけば夜になっていて、別れの時間は唐突に訪れた。