季龍さんの語った過去に、すっかり言葉を失っていた。

まさか、季龍さんのお母さんが私と同じ目に合っていたなんて。…そして、その行方もわからないまま。

きっと状況は私よりも悪い。だって、そんな大切な人の行方を季龍さんが、源之助さんが調べないはずがない。

それなのに、行方も、生死も分からないなんて、信じられない。どこかに幽閉されているのか、それとも、もう…。

「琴音?」

「…っ!?」

我に返ると、季龍さんの心配そうな視線と重なる。

首を横に振って笑みを浮かべる。

こんなこと、私が考えなくたって、季龍さんは分かってる。それをあえて口にしないんだ。蒸し返す必要なんてないのに。

頭を撫でられ、抱き締められる。

「心配するな。今度こそ、お前を守る。…必ず、お前は…」

「…」

「…って、2度もお前を守れなかった俺が言っても、なんの説得力もねぇか。さっきも言ってんのに、アホだな俺は…」

「ッ!?」

違う。そんなこと、恐れてない。私は、ただ…。

体が離れる。悲しげな顔をした季龍さんは、名残惜しそうに私の頬を撫でる。

「…琴音、お前は親父と梨々香と一緒にここを離れてもらう」

「…ぇ?」

今、なんて…言ったの?

離れる?ここを…?

どうして、私は…季龍さんの傍にいたい。…傍に置いて欲しいのに。