次目が覚めたときには、いた場所が変わったのかと思えるほど部屋の中は荒れていた。
思わず臨戦態勢に入ったが、偽装工作のためと信洋が自身で荒らしたらしい。
『よし、行くよ。妹チャンおんぶする?』
『あぁ』
時刻は日付を跨いだところ。
眠ったままの梨々香を背負い、信洋が先導して部屋を出る。横付けされた車は黒のワゴン車。
それがドアを開けると、手招きされる。信洋と共にそれに乗り込むと、車は走り出す。
『信洋、親父さん喜んでたぞ』
『マジっすか?給料上がるっすかね?』
『お前なぁ』
緊張感が欠ける車内。そんな空気が変わることなく走り続けること2時間。
たどり着いたのは『永塚組』と看板を掲げる組だった。
『組なんて聞いてねぇぞ!?』
『木を隠すなら森の中って言うでしょうよ』
『それでもっ!!』
『来たか?』
信洋に掴みかかろうとしたとき、その場に響いた声に体が痺れたような衝撃を受ける。
玄関先に立っているのは、笑みを浮かべた老人。だが、その気迫は本物で、息をするのすら忘れてその人物に目を奪われた。


