私のご主人様Ⅲ


次目が覚めたときには、いた場所が変わったのかと思えるほど部屋の中は荒れていた。

思わず臨戦態勢に入ったが、偽装工作のためと信洋が自身で荒らしたらしい。

『よし、行くよ。妹チャンおんぶする?』

『あぁ』

時刻は日付を跨いだところ。

眠ったままの梨々香を背負い、信洋が先導して部屋を出る。横付けされた車は黒のワゴン車。

それがドアを開けると、手招きされる。信洋と共にそれに乗り込むと、車は走り出す。

『信洋、親父さん喜んでたぞ』

『マジっすか?給料上がるっすかね?』

『お前なぁ』

緊張感が欠ける車内。そんな空気が変わることなく走り続けること2時間。

たどり着いたのは『永塚組』と看板を掲げる組だった。

『組なんて聞いてねぇぞ!?』

『木を隠すなら森の中って言うでしょうよ』

『それでもっ!!』

『来たか?』

信洋に掴みかかろうとしたとき、その場に響いた声に体が痺れたような衝撃を受ける。

玄関先に立っているのは、笑みを浮かべた老人。だが、その気迫は本物で、息をするのすら忘れてその人物に目を奪われた。