「琴音」

「っん…」

顔をあげたとほぼ同時に塞がれた唇。

おかしいな。いつもなら1回だけなのに…。

頭を撫でられて、そのまま肩を抱き寄せられる。

どうして季龍さんはこんなことするんだろう。何を求めてるんだろう。それを拒まない私も、何やってるんだろう…。

不意に予鈴か鳴る。教室に戻らなきゃ。

立ち上がろうと床に手を着くと、なぜか肩を掴む手に力が入った。

「…琴音、午後は戻らねぇ」

「?」

唐突な言葉に理解が遅れる。

午後の授業をサボるってこと?授業をサボるなんて滅多にない季龍さんが、そんなことを言うなんて珍しい。

床についた手を離すと、季龍さんは私の手をとって、何かを渡してくる。…手紙?

季龍さんの手が離れ、手紙を裏返すとそこに書いてあった文字に目を疑った。