「きりゅ…さん」

「なんだ?」

「…ち、…かい…です」

「うるせぇ」

文化祭の日から昼休みになると屋上に連れ出される。

鍵を閉めてしまえばそこは私と季龍さん以外誰もいなくて、お屋敷でも学校でも完全に2人きりになるなんてなかなかないから不思議な感じがする。

「琴音」

呼ばれ、顔を向けた途端に重なる唇。

変わったのは、季龍さんの雰囲気もそうだけど、こうやって2人きりになるとキスされたり、抱き締められたりと距離が近いこと。

でも、それを拒むこともせず、何となく受け入れているのは、なぜなのか自分でも分からない。

でも、まるで恋人のように振る舞う季龍さんが、先日の彼氏宣言を嘘じゃないと私に言い聞かせているような気がして、もやもやが残る。

離れると、季龍さんはそれを惜しむように抱き締められた。