「……………………………………………」

音が聞こえる。でも、何をいっているのか理解できない。

分からない。音が遠い。

分からない。分からない…分からない……。

「…」

不意に息が詰まる。息が出来ない。

あれ?…あ、れ?

目の前に季龍さんがいる。唇が何かに重なってる。

…ワタシハナニヲシテル?

ゆっくりと、まるで離れることを惜しむように離れていった季龍さんの顔がはっきりと見える。

季龍さんとキスした。

その事実を頭が埋め尽くす。嘘、嘘…なんで、なんでそうなるの?

なんで季龍さんは私にキスするの?

なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?

理解できなくて、固まったままの私に、季龍さんは眉を潜めまた近づいてくる。それを避けることも、拒否することも出来なくて、また唇が重なる。

「っん…」

息が苦しくて、知らない間に繋いでいた手に力が入る。

しばらくして離れた途端崩れ落ちそうになった私を季龍さんはフェンスに押し付けた。