私のご主人様Ⅲ


口を押さえていた手が離れてだらりと下がる。

終わった。もう、何もかも…終わりだ。

たった、これっぽちの下らないことで、終わらせてしまった。

2度と戻ってくるなと言われたのに…。

風が吹き抜ける。フェンスの向こうに広がった青に、心臓が高鳴る。

あぁ、そうだ。いっそのこと、ここで…。そうだよ。どうせ、お父さんも死んじゃうんだ。

なら、死んだ方がずっと、幸せになれるよね?

フェンスに手の伸ばす。

コレヲコエタラ、シンデモイイヨネ?

死にたい。もう、疲れた…。

音が遠くなる。回りの音すら消えて、世界はモノクロに染まる。

「…ね?……琴音っ!!!」

腕を捕まれ、視界は反転する。あ、季龍さんいたんだ…。

登ろうとしていたフェンスに押し付けられ、身動きがとれなくなる。それすらどうでもよくなって、離してくれた動けばいいやと無気力になる。

どうせ捨てられるなら、いっそのこと殺してくれればいいのに。

季龍さんが伸ばしてくる手をぼんやりと見つめた。