口を押さえていた手が離れてだらりと下がる。
終わった。もう、何もかも…終わりだ。
たった、これっぽちの下らないことで、終わらせてしまった。
2度と戻ってくるなと言われたのに…。
風が吹き抜ける。フェンスの向こうに広がった青に、心臓が高鳴る。
あぁ、そうだ。いっそのこと、ここで…。そうだよ。どうせ、お父さんも死んじゃうんだ。
なら、死んだ方がずっと、幸せになれるよね?
フェンスに手の伸ばす。
コレヲコエタラ、シンデモイイヨネ?
死にたい。もう、疲れた…。
音が遠くなる。回りの音すら消えて、世界はモノクロに染まる。
「…ね?……琴音っ!!!」
腕を捕まれ、視界は反転する。あ、季龍さんいたんだ…。
登ろうとしていたフェンスに押し付けられ、身動きがとれなくなる。それすらどうでもよくなって、離してくれた動けばいいやと無気力になる。
どうせ捨てられるなら、いっそのこと殺してくれればいいのに。
季龍さんが伸ばしてくる手をぼんやりと見つめた。


