「また、暴力を振るわれるくらいなら、お屋敷でずっと奏多さんと暁くんと一緒にいたいです」
「…」
「…もう嫌なのっ!季龍さんを好きな人たちから、暴力も悪口も言われたくないっ!もう我慢したくないのっ!なんでいつも私ばっかり責められないといけないの!?」
季龍さんは表情1つ変えることなく私に視線を向け続けている。
そんな季龍さんが、自分には関係ないと言うように表情1つ変えない。そんな顔が、憎らしくて、自分だけ騒いでいるのが酷く滑稽に感じる。
それを自覚した途端、押さえつけていた言葉の鍵が壊れた。
「ご主人様のことなんか大っ嫌いだ!!」
言葉が飛び出したとほぼ同時に両手で口を押さえる。
でも、そんなの遅すぎて季龍さんの耳にははっきりと届いていたはず。
顔が青ざめていくのが分かる。
…終わった。終わらせてしまった。
私はただの恥だろう。すぐに捨てられる。そしたら、今度こそ奴隷になるかもしれない。
それに、お父さんも死んじゃうかもしれない…。
なんて、バカなことをしたんだろう。我慢すればいいだけだったのに。いつものように笑みを貼り付けていれば、それで済んだのに。
なんで、こんなこと言っちゃったんだろう…。


