「琴、結城くん。終わるまで休憩行っていいよ」

「やっと終わり?」

「うん。お疲れ様」

すっかりリズムが取れていた中で動いていたせいか、時間が過ぎるのはあっという間だった。

休憩時間に割り振られた最終ローテーションの時間になったらしい。

うんと背伸びをする麻夏くんとお客さんからのクレームをほぼ受けていたせいか、休憩と聞いた途端にどっと疲れが押し寄せてくる。

ため息をこぼすと、少しだけ体が軽くなった気がした。

「浴衣着たままで行ってね。まぁ、宣伝なんか必要ないけど」

「琴音ちゃんお疲れー」

「いってらっしゃい」

厨房班の何人かに手を振られ、それを返していると、麻夏くんに手を取られた。

「葉月さん、行こ」

「コクン」

麻夏くんに手を引っ張られていると、窓際に立ったままの季龍さんと一瞬視線が重なる。

そういえば季龍さん休憩入ってないな…。何かした訳じゃないけど、来る人来る人にガン見されて疲れているはずなのに。

…でも、季龍さんが動かないなら、下手に私が言うこともないよね?

重なった視線を反らし、少し振り返った麻夏くんに笑いかける。

手を繋いだまま教室のドアに手をかけた麻夏くんの背を見つめていると、背後からの悲鳴と共に強い力に引き寄せられて麻夏くんの手を掴んでいた手が離れた。