「お前せいじゃない。お前は何も悪くねぇんだ。謝るな」

「…違います。私が、いけないから」

「琴音」

「私が、季龍さんの命令に従えないから。だから、私が…」

「…琴音。俺は、お前を操り人形にしたい訳じゃねぇよ」

操り人形…?

恐る恐る季龍さんを見上げると、視線が重なる。

その瞳に、飲み込まれるようにまた動けなくなる。

「言っただろ。自分を傷つけるようなことはするな。卑下にするなと」

「…」

「今回は俺に非がある。だから、謝る。お前に謝らせたら、俺は自分の非すら認められねぇ男になるんだよ」

違う。こんなの、違う。

だって、使用人は主の言うことが全て。

主が怒るのは私のせいなの。

こんなの、知らない。主が、全てなのに。なんで、それを否定するの…?

「…季龍さん、私は使用人です。主の言うことが全て正しいんです。それが、理不尽だろうが、そんなの、関係ないんです…」

「…お前にそう思わせてる時点で、俺はダメな奴なんだよ」

季龍さんはそう言うと、悔しそうに表情を歪ませる。

その表情に、また季龍さんを苦しめたんだと、ゾッとした。