「親父、なんで琴音を連れ出したんだ」

「ただの墓参りだ。それ以外の場所には寄ってもおらんよ」

「っこんな危険なときに、わざわざ赤の他人の墓参りになんか行ってんじゃねぇよ!!」

突然上がった季龍さんの怒声に、目を見開く。

…まさか季龍さんは知らない?…知らなかったと行ってほしい。

だって、源之助さんは初恋の人を今でも想っていて、高速を使っても2時間はかかる場所まで行っているのに。

それを、赤の他人だなんて言えるはずがないのに。

「完全にほとぼりが冷めるまでは動かないでくれって頼んだだろ!もし何かあったらどうするんだよ!!親父のその足で逃げられんのか!?琴音をまた巻き込んでたかもしれないんだぞ!!」

季龍さんの怒声は止まるどころか勢いを増すばかりだ。

でも、その声は心の底から源之助さんを、私を案じる悲鳴のようで、心が揺れるのを感じた。

確かに、わざわざ今行く必要はなかったのかもしれない。…でも、源之助さんが私をわざわざ連れていったのは、何か意味があったように思う。

例えばそう、源之助さんの初恋の人が嫁いだ家と、彼女のお墓がああなった意味を教えるために…。