「…そろそろ行こうか」

「はい」

「…コク」

源之助さんがそう告げたのはお線香が半分ほど燃え尽きた時だった。

踵を返し、墓に背を向けて歩き出す源之助さん。早く追いかけなきゃ。

立ち上がり、お墓の敷地内を出ようとしたそのとき、不意に視界の隅で捉えた文字に自然と視線が墓石に向かう。

…え?

目に飛び込んできた文字に体が動かなくなる。

―ドクン

どうして?なんで…。

『どうなっている!!こんなものがあるか!!』

『っ全て正しいです!そのように怒鳴られても…』

『直せ。“修正”するんだ!!』

『っ改ざんしろと言うのですか!?』

『改ざんではない。“修正”だ!こんな出鱈目な数値は今すぐ消すんだ!!』

あれは、嘘じゃなかったの?

じゃあ、あの家はあんなことをずっと…。

「琴葉ちゃん、行くよ」

「ッ!?」

源之助さんの声に我に返る。源之助さんたちは大分進んでいて、慌ててお墓の敷地から出てその背を追いかける。