できた花束を両手に抱えて振り返ると源之助さんは満足そうに微笑んだ。
「ありがとう、琴葉ちゃん。…それじゃあ、行こうか」
「?」
行く…?行くってどこへ?
源之助さんの言葉を聞いて田部さんはどこかへ行ってしまう。それを呆然と見送っていると、源之助さんが立ち上がろうとしているのを見て飛び上がりそうになる。
すぐに傍に立って支えになると、源之助さんに言われるままに杖のような役割をしながら進む。
向かった先には田部さんが車を回していて、既に後部座席のドアを開けて待ち構えていた。
どこかに出掛けられるらしい。じゃあこの花束は手土産とかかな?
そんなことを思いながら源之助さんが車に乗り込むのを田部さんと補助して、中に乗っている源之助さんに花束を渡そうとすると、隣の座席を叩かれた。
「琴葉ちゃんも乗りなさい」
「??」
え、どういうこと…?想定外のことに頭がついていかない。
わ、私も行くの?でも外出はダメだって希龍さんが言ってたのに。
ドアの前で立ちすくんでいると、田部さんに背中を押される。
「早く乗ってください」
「…コク」
恐る恐る車に乗り込むと同時に閉められたドア。田部さんはすぐに運転席に乗り込み、出発した。


