あ、あれって…。
源之助さんに視線を戻すと、微笑みを返してくれる。
「琴音だよ。キミがくれたあの花だ」
「っ!?」
「これを花束にするのは、キミ以外に頼むつもりはない。…作ってくれるかい?」
「…コクン!」
やっぱり間違いない。カップのような白い花がピンクに色づいている。
あぁ、これはこんな風に花を色づかせるんだ。自然と暖かい気持ちになって頬が緩む。
ハサミと軍手を借りて、用意してあった下駄を履いて庭に出る。
庭に直接植えられている薔薇は多くの花をつけている。花の中心から外側に向かっていくピンク色のグラデーションが、あの時見られなかった姿なんだと、思わず見つめてしまう。
っいけないいけない!花束を作らないと。
あの時とは違って、一輪一輪を丁寧に扱っていく。もちろん棘の処理は軍手で安全に。
花がお互いを潰してしまわないように高低差をつけてまとめていくと、不意に差し出されたのは輪ゴム。
驚いて振り返ると微笑んだ田部さんがいて、その手には包装紙まである。
「早かったの、田部」
「琴音さんが普段から整理整頓を心掛けて下さっているのであっという間でしたよ」
「っ!?」
と、突然ほめられると恥ずかしい…。
顔が赤いのがバレないように少しうつむいて花束を仕上げる。


